森の概要

都市を再生しながら、自然環境を再生する

大手町タワーの最大の特徴は、敷地全体の約3分の1に相当する約3,600m²におよぶ「大手町の森」です。
「地上の歩行者空間ネットワークの再整備」と「環境に配慮したまちづくり」の観点から「都市を再生しながら自然を再生する」という開発コンセプトのもと、単なる広場ではなく、この地に本来あるべき自然の、本物の森の創造を目指しました。
そこで、学識経験者の英知を結集し、フィールドワークを重ねて大手町という地の植生を調査した結果、2つの植物群の切り替えの地であったことが判明。
それらの群集の構成種を植樹することで、「人が心地よく、生き物が棲みやすい、自然・郷土の森」を再現しています。

大手町の森の整備効果

大手町の森の整備効果は、ビル敷地内だけに留らず、主に3つの整備効果があります。

  1. 生態系ネットワーク:都心において最も豊かな生態系を育む「皇居」からほど近い距離に「自然の森」を作ることで、様々な生き物が行き交う移動拠点ともなり、都市の生態系を充実させています。
  2. ヒートアイランド現象の緩和:木々が織りなす緑のシェードが直射日光を遮ることはもちろん、約3,600㎡もの自然の森が持つ木々の蒸散作用や土壌の保水力によりクールスポットを形成。開発後は敷地内で1.7℃、周辺敷地でも0.3℃の平均気温の低下が観測されました。
  3. 水の循環利用:屋根や人工地盤への降雨を植栽の灌水に使用し、水の循環利用を行っているほか、人工地盤上の土は雨水の一次貯留施設として、ゲリラ豪雨時の敷地外流出防止に寄与しています。

自然から学んだ森の3要素 「疎密」「異齢」「混交」

利用者にとって心地よい「本物の森」とは何か?
実際に複数の自然の森を調査してわかったのは、複雑な起伏の中で木が密集したりまばらだったりすること(疎密)、幹の太さや木の高さなどさまざまな樹齢の木があり常に入れ替わっていること(異齢)、常緑樹・落葉樹・地被類など多様な種類が混ざっていること(混交)、この3要素を有していることでした。
これらを計画的に取り入れて「本物の森」をつくる。そのために、敷地の中で森と通路をはっきりと分け、集中して森づくりに取り組みました。

疎密

高密度エリアと低密度エリアの組み合わせ

異齢

異なる年齢の樹木が混在

混交

遷移の過程における常落混交の明るく若い森

実際に森をつくってみて検証する「プレフォレスト」

ビジネス街に「本物の森」をつくり維持するには、何をどう植え、どう管理するべきか、初めての挑戦だけにわからないことだらけでした。そこで「プレフォレスト」という手法を活用しました。
千葉県君津市の山林に約1,300m²(「大手町の森」全体の約3分の1)のスペースを確保し、土の起伏や人工地盤、土壌の成分、樹木の密度や種類などを、計画地と同じようにつくり、約3年かけて施工方法や植物の生育、適切な管理方法を検証。この結果をもとに、君津から大手町に育成した土壌や植物を移植しつつ、敷地全体に「本物の森」を再現したのです。森に植えた木々は、遺伝的かく乱に配慮するため、関東近郊の山から集められました。約200本の木は園芸用の形の整った木ではなく、まさに自然の中で、計画地の地形にあわせて選ばれた自然の木です。

208種の植物、129種の昆虫、13種類の鳥類が育ち、行き交う森

当初、施工時に意図して植えた植物は樹木・地被類あわせて117種でしたが、2014年の竣工後には301種類の植物を確認。
多くは土壌の中に含まれていた種子から発芽して育ったものと考えられます。
その後は、樹木の成長とともに適者生存・競争が始まり、2021年時点では208種類に落ち着き、日照を好む種が減少し、日陰を好む種が増加しました。なかには絶滅の恐れがある種に該当する、レッドリストに記載されている希少種まで出現し始めました。
昆虫は129種、レッドリストに記載のトンボも確認。鳥類はハヤブサなど13種類。タヌキもまれに訪れます。
本物の森だからこその豊かな多様性。このように時とともに生物多様性が高まっており、今後も周辺緑地とのネットワークによって地域全体の生態系に貢献していきます。

植物類

昆虫類:計129種

鳥類:計13種

その他

森が成長した結果、日照を好む種は減少したが、日陰を好む種が増加し、レッドリストに記載される希少種まで出現し始めた。

大手町タワー・大手町の森に関する表彰・認証実績

◎ 「DBJ Green Building 認証」の最高ランク5つ星認証(2022年11月)
◎ 「いきもの共生事務所*認証制度(都市・SC版)」の第1号認証取得(2014年2月)
◎ 第30回 都市公園コンクールで最高位「国土交通大臣賞(企画・独創部門)」受賞(2014年10月)
◎ 「SEGES(社会・環境貢献緑地評価システム):都市のオアシス2021」認定(2021年9月)
◎ 第35回「緑の都市賞”国土交通大臣賞”」受賞(2015年10月)
◎2022年自然共生サイト(仮称)認定実証事業(試行後期) 審査結果:「認定」相当

※2023年8月時点